2011年07月03日

北アの魅せる夢 燕岳の白昼夢


北アの前山の一角、燕岳(2,763m)へ日帰り家族登山。

 中房温泉 ⇒ 第一〜第三ベンチ ⇒ 富士見ベンチ ⇒ 合戦小屋 ⇒
 合戦尾根 ⇒ 燕山荘 ⇒ 燕岳山頂 ⇒ 往路を中房温泉へと下る・・・

北アルプスの中では、
笠ヶ岳の笠新道(標高差1,793m)、
次いで烏帽子岳のブナ立尾根(標高差1,357m)、
次にこの燕岳の合戦尾根の片道5,5km 標高差1,243mとなっている。

山岳天気予報でも雨、決して三大急登を舐めているわけではない・・!

中房温泉まで行くだけ!見るだけ!と言って車に乗り込み、
朝、登山靴の紐を結びながら降ったら帰るから!合戦小屋のスイカを食べるだけ!と言い、
¥800を払いながら(下記参照)、燕山荘見えたら帰っても・・などと落ち着き無く言ってみたり・・
最後の稜線では、単独行動にでる!という快挙まで達し(!)
なりふり構わずといった言葉が似合う山行となった・・・!!




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本当に良く頑張った、自分・・・!

自分の虐げられてきた半生を今まで此処で晒してきたが、
(山行レポートではなかったのか・・・mm)
今回は「別人のようだ・・・!」「よくやった・・・!」と歩きながら自分でも高揚を抑え切れなかった・・・!!

差し詰め、今までの俺は「関白失脚」で
これからの俺は「関白宣言」とでも言っておこう。。。

この興奮冷めやらぬうちにPCへ向かう深夜・・・



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土曜の夕方まで仕事だった。

そもそも山行計画の時点から今回は違っていた・・・
『日帰りで』 『北アで』 これが最低条件だ。
そして 『俺は決めない』 

そう、運転手は君だ♪車掌は僕だ♪だ。


思えば今まで、
我が家の登山計画は大まかな目標山脈を俺が呟く。
「ほい、キタ!」と妻が、ノリの良い合いの手の割にはなんとなく目指す山を決める。
そして彼女が「こんな道は嫌だ」「ここにも寄れるように努力せよ!」とイメージだけで伝えてくださる。
努力する俺、下調べ等無しで頑なにイメージを実現せよ!と後ろで煙草を二本同時にくわえる彼女。
仕舞いには「言いだしっぺは自分でしょ!?」と、おびただしい量の煙を穴という穴から出しながら足を踏み鳴らす。

そうして登山口からいざ出発という件になってから
「あそこに寄れないではないか!」
「こんな道は許可した覚えはない!」
「責任者はお前だ!」
・・・とまぁこうだ。

だが、今回は違う。
俺には「お仕事」という大義名分がある・・・!
帰宅して即出発するには、計画も準備も責任者すらも無理なのだ!
ビバ!お仕事!! サンクス!お仕事!!


いつも奴のことを「幸せそうで羨ましい」と思っていた。
その逆、「羨ましいけどあぁなりたくはない」とも思っていた。

しかし、俺の深層心理には【幸せ】=【勝手気まま】という公式が出来上がっていた。
不条理に!理不尽に!が今回の山行のモットーだと思い込んでしまった。。
今まで不遇な扱いを受けてきたが、もしかしてこれは奴の幸せの為であって俺の幸せには近づいてない行為だったのかもしれない!

・・・『999』のボルトじゃねぇか・・・!!俺は惑星の部品かよ・・・愕然とした。

そう、俺が幸せになるには目の前にある「お手本」の様に勝手・我侭・傍若無人になるしかなかった・・・
俺は鉄郎じゃねぇ!・・・フリーダムだ! ・・・解き放たれよ!!俺!!


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・・・数日前の俺をこうして冷静な目で見ているとよほど切羽詰まっていたのが分かる・・・
戻れるのならその時の自分に言ってやりたい。
「全ての過ちはそこからだ!」と・・・


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中房温泉の第二町営駐車場へ深夜に車を乗り入れる。
第二は(妻が)思った通り車も少なく、暗いうちから行動してもさほど周りの迷惑にならない。
−というのは建前で、迷惑をかけられない。と言った方が正しいのかも。

天気予報は雨。
いいさ、雨でも。。。ここまで来たらある程度気が済んだのもある。
今日はまるでお客さん気分だ。
連れて行ってもらう山行は楽しい。
気分でダメ出しをして、適当に良い道だと褒める。
良い道なのはお前の功績ではない。と落としてみせる。
後になって、あぁすれば良かったね、などと上から言ってみる。
なぜしなかった。考えれば分かる事だ。と叱咤してみせる。
お手本通りだ・・・・・・考えただけでワクワクする小さい俺。

今になって、何かお客さん登山を勘違いしていた事に気付く。。。
このまま山行日記を書き進んでいいものか暫し悩む・・・


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AM5:00 第一駐車場へ移って早速出発する。
出発時間になってもどうせ雨でしょ・・と高をくくっていた妻は血圧が低そう。
いいぞ!圧力!!



しかし、そんな弱そうな妻を見ていると、中央道で彼女がポロリと漏らした言葉が反芻する・・・。


「ロバートマイルズのチルドレンを聴くと何にでも勝てそうな気がすんだよね・・・」


96年頃に電波という電波から絶えずかかっていたトランスだ。
その言葉を妻は深夜の中央道、
それも轟音をたてて追い越して行くトレーラーを見ながら気だるそうに呟いた・・・

「うん、(貴方ならトレーラーにでも勝てそうな)そんな気がするよ」と言った俺の言葉はその轟音にかき消されたのだが。



「チルドレンでも聴いてみたらw?」
同情心からだろうか・・・ここまで来て出だしでやる気のない奴を見るに耐えなかった。


次の瞬間、奴の体は

ガシャーン!ガシャコーン!ゴゴゴゴゴ・・!!

とまるでトランスフォームされたかのように息吹を吹き返し、

デガシャン!デガシャン!!

といきなり始まった急登をけたたましく登って行くではないか!!!


・・・ふ、不覚・・・;;


デガシャーン! デガシャーン!・・・
「やっちまった・・」立ち尽くす俺を、事の成り行きを静観していた息子が追い越して行く。
「やってくれたね、父ちゃん・・・」そんな視線が冷たい・・・


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第一ベンチ到着。
我々より数分先に到着していたデストロンは、俺たちの姿を確認すると「っじゃっ!」とばかりに先を進む。

水場で息子と二人で反省会を開催。いつにも増して早い開催である・・・

道祖神に旅の安全とデストロン撲滅を祈願して歩を進める。


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早くも「関白宣言」に不安が見え隠れし始める・・・

角角毎に小さくデガシャーン! デガシャーン!」と聞こえる。
そしてシルエットの残像だけが補色残像として脳裏に残る。

「て、天狗か・・・!?」

一本歯の高下駄でカツーン カツーンと岩から岩へと飛び移って、
持っているのは錫杖か!?歯団扇か!?

一瞬我が目を疑って目を擦る。
辺りを不気味な笑い声が包む・・・

これって、笑い返すと大声で笑われる天狗返しってやつじゃぁ・・・


思い出した・・!
以前部屋の扉に『ヨガフレイム中』と張り紙がしてあった・・・
その張り紙の効力たるや、結界が張ってあるかのように何人たりとも近づけず、中の様子をうかがうことも叶わず、時折聞こえる怒号に幼い息子は震え、それを慰める俺も震えていたのだ。
半日程して憔悴しきった妻が倒れるように部屋の外に出てきた・・
中に居たのはやはり妻。ヨガフレイム中だったのも妻。
その時、ヨガフレイム中とは何なのか見てはならぬ・聞いてはならぬと俺の第六感が緊急警告を発していた。
そうして今日まで生きながらえてきた・・・


今まさにその時と同じような感覚に包まれている・・・
見たものも、聞いたことも誰にも言っちゃぁなんねぇ・・・


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一本歯下駄の音が遠ざかると、突如ケーブルの機械音が木霊する・・・

・・・夢を見ていたのかもしれない・・・

御伽噺に飲み込まれていた我々の前を、ブルーシートに包まれた荷物がゴウンゴゥンと音をたてながら現実世界に引き戻す。。。


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何も言わずとも・・息子と二人、目線だけ合わしてフッとため息にも似た微笑を浮かべる。

どうやら、同じ夢を視たようだな俺たちは・・・



第二ベンチで腰を降ろし、わざと全く関係無い話に興じる。
息子は燕山荘で友達に土産を買うそうだ。
そしてうどんを食べるそうだ。
ホント、全く関係無い。。


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天狗の姿はない・・

当初予定していた勝手気ままに文句を言う計画も頓挫し、
今はもう 夢の中をうつつとしながら息せき切って歩くだけになってしまった。

燕岳の魅せる白昼夢の中をもがきながら進むだけだ・・・


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「あ!見えた!」息子の声が響く。顔を上げるとほんの一瞬雲の切れ間から顔を出す。

山を隠す雲が悪戯っぽく、
見える〜?。。。見せないよ〜w。。。見えた〜?。。。まだ見せないよ〜w。。。

その度に「あー!何だよ!」。。。「意地が悪い奴め!」。。。「チラリズムか!クソ!!」
という寸劇を心の中で楽しむ。
そう思っていたのだが、疲れと先程までの幻覚で一部始終声に出していたことが判明する。

寸劇中の俺を追い越す方の眼差しが優しい。
哀れみを含んだ優しい声で「疲れたねぇ〜もうちょっとで第三ベンチだからね〜」。

痛い子を見て気まずかったのだろう、二人連れだが姿が見えなくなるまではその言葉ぽっきりで無言で歩いていかれた・・・


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その方達とは合戦小屋で出会うも気まずさ倍増・・・


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ほどなくして第三ベンチ。
登山道の様子も木の根・岩道から花崗岩の露出した登りへと変貌する。


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こんな場所は・・・

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この様に足を持ち上げて岩を掴み登って行く。



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木々の間から息子を狙っていると頭上から天狗様の声がする。

「動くな!それはフェイクだ!!」

出たな物の怪め・・・!
物の怪曰く息子の足の下にある石は 浮き石のようだ。
もう片方の足で重心をとり 慎重にそぅっと足を石から外す。


「天狗様はいつでも下々の者を見守っておるぞ!よきに計らえ!!」


満足そうな天狗様は高々に笑いながら突風とともに山奥に消えていきましたとさ。


もはや自称天狗様である・・・
助けられた息子に至っては「燕山荘で天狗様のお守り買おうっと・・」などと騙し甲斐満載だ。
天狗様は魔よけではない。天狗のお守りは売ってはいない。
息子が今見た天狗様は「天狗の詫び状」を書かねばならない天狗様なのだから。
旅人を脅かして喜んでいた天狗様、無意味に奇怪な声で笑う天狗様、
そう、山での怪奇現象はいつもあの天狗様の仕業だったではないか・・・


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未だ解読されていないとかあるとかないとか言われている【天狗の詫び状】

一度何かでチラリと見た時、妻は「ものっそい反省してるじゃんw!!」と言った・・・

読めたんだ・・・アレが・・・

どうやら反省してる天狗を想像して可笑しくなっていたのか、
「超ゴメン!だってーーッwww!!」と暫らくは鬼の首でも取ったかのように手足をバタつかせて喜んでいた。

【天狗の詫び状】が解読不可能だったのことを知ったのは、息子という命を授かってからだった・・・


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その息子は【天狗の詫び状】が読めない。

当たり前の事だが、確認せねばならない大事な事でもあった。
俺にとっては、血液型云々 DNA検査云々(してませんが)などよりも気にかかる事だった。

・・今だから言えるが、父ちゃんはお前が読み書きが出来る様になるのが少し怖かった・・


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親族は一様に怪訝な顔をした。
そりゃぁそうだ。
【はらぺこあおむし】や【ノンタン】を片言で読む息子からそれらの絵本を取り上げ、PC画面の前に座らせる。
「トーマス!トーマス(を見せてくれ)!」と泣き叫ぶ息子に【天狗の詫び状】をフル画面で見せる。
誰がどう見たって軽い虐待だろう。そんな行為は決まって家人が出払った時間に行われた。

・・まだ幼すぎるか・・。
・・まだ伝授されていないか・・。
幾度と無く繰り返される強制閲覧に家族が気付くのは遅くなかった。。。


あんたオカシイんじゃないの?二十世紀最後の魔女裁判である・・・


人類未解読文書を読んだ妻に あんたオカシイよ!? あんたぁ変な人だ! というレッテルを貼られ、
親族が集まる度にそのオカシカッタ話を持ち出され、見世物にされてきた十数年間。

いっそ、「長らくお世話になりました天狗の国に帰ります」と言ってこの山に還ってもらえれば積年の恨みも果たされようものなのに・・・


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「よいしょ・・父ちゃん全部声に出てるから・・」

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アワアワと取り繕うも、時既に遅し・・・


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富士見ベンチでは、山に還るハズの天狗様がどっかり腰を降ろし一服中だった。

息子にダークサイドな生い立ちを知られてしまった・・・
今まで通り、普通の親子のフリをして俺だけが闇に葬れば良かった事実ナノニ・・・!

片隅で自分がダークサイドに堕ちていると、天狗の高笑いが聞こえた。

「あっ!ヒドい!寝返ったな息子!!」


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合戦小屋では、上記で出会ったお二方を避けるように座る。

写真は天狗様を思わせる道祖神に怖くて近づけない息子ではない、念の為。


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ハーフカットで¥800のスイカ。
手も顔もジャブジャブになりながら食べた。

この時、頬にパタパタと滴が・・・!
約束の時が迫る・・・!

(雨が降ったら合戦小屋まで)
それを忘れたワケではなかったが、燕の魅せる夢に翻弄されすっかり忘れていた。
(早い話しが忘れていた)

天狗様の腰掛ける場所の上で無駄にヒサシ(雨避け)を作ってみたりした。
屋根のあるベンチで「もう歩けないからここで休もう」など慣れぬ我侭を言ってみるも
志村けんのひとみ婆さんバリに「あぁ!?あんだって??」と返す天狗様。
小屋前の休憩場では大変に目立つ行為だ。
でも、やったさ。恥なんてとうの昔に忘れちまったさ・・・。
その甲斐あって天狗様には雨を気付かれなかったが、俺の独り言を聞いてしまったお二方は尚怪訝そうな顔でこちらを見ている・・・

目が合うと「怪しい者じゃありません」とニカッっと笑ってみせる俺。
青い顔でそそくさと目をそらす二人。急いで荷物を背負いスタスタと逃げるように小屋を後にする・・・

「天狗様に魅入られたんだ、あの男は・・・」

あぅ、違う。違うんデス。話しを聞いて・・


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合戦小屋での大休止の後、雨も冷やかしだけで終わりなんだか期待できそうな天候に・・・


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オオバキスミレもチラホラ咲いている。

先に歩くお二方とは距離をとって出発する。
気のせいか向うも我々を振り返りつつ進んでいるようだ・・・(完全に被害妄想)


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合戦沢の頭、常念・大天井を越えて分厚い雲が瞬く間に穂高へ流れ落ちる。
このくらいの雲は予想の範疇・・・


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濡れた雪渓を踏み・・

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オレンジ色の階段を上がると・・・



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約束の地、燕山荘が見えた!

ここらで息子がバテだした・・不甲斐ない、天狗様の血を引くのに・・・



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燕山荘が見えてからの自分と言ったら、ソワソワ・ジリジリしっぱなしだった。


息子は何が何でも燕岳山頂へ登るんだ!と初めて見るような気合の入りっぷり。
ただその気合とは裏腹に、シャリバテか高山病かみるみる足は固まっていく。


天狗様は息子の雄姿を初めて目の当たりにし、気分はすっかり母親である。
いつもの夜叉(注:鬼子母神になる前の鬼の姿)顔は影を潜め、
「よく頑張った」「自分のペースで行けるとこまでね」と言葉通り別人である。

夜叉が母になったら今日は山頂は拝めそうもないな・・・

その時夜叉が顔を上げ、奇妙奇天烈な言葉を言い放った・・・!


「一人で山頂まで行くかい?」




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時が止まった・・・!!!


「我ラハ息子ノペースデ燕山荘マデ向カウ。
 貴様ハ山頂マデ単独デ向カイ 燕山荘デ落チ合オウデハナイカ!」


固まる自分と固まる息子の足を尻目に夜叉は続ける。

「貴様としては、よく頑張ったのは仕事から直行した自分であるし、運転してきた自分である・・・。
 ここまで言いたい文句も言わせてもらえないままに、山頂目前にして「もぅ頑張ったからここまでで終わろう!」などと
 今にも言い出しそうな朕にハラハラしながら無言で写真を撮っているのであろう。」
「そう思っているのであろう!!」

「さぁもう良い。行け!!」


昨晩、三国志を読みましたね・・・天狗様・・・

いや!そんな事はどうでもいい!

いいのかい!?本当にいいのかい!?
いや・・・今こそ決行の時ではないか・・・!
幸せになる為の法則(冒頭参照)によると、天狗様の真似をすれば俺にだって幸せになれるハズだ・・・

そう勝手気ままに傍若無人に目指すはフリーダム・・・!!

背中の荷物の大半を天狗様に託し、若干の荷物で歩き出す。。。
時折振り返っては、神々しくも笑顔で見送る二人に精一杯の感謝の気持ちでシャッターを切る。


信じられない・・・・・・!
今、小言の一つも言われずにむしろ気持ちよく送り出される自分・・・

一体何がどうなっているのか、理解出来なかった。
ただただ興奮している気持ちを抑えるように一歩一歩踏みしめて前を見ることしか・・・



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み、見えた・・・!

燕山荘を通過して目指すは山頂。
雲が流れていく・・・!
信じられないラッキーが重なっていく。チキンな俺はラッキーが続く度少し不安になる。

罠ではないか・・・


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ここまで辿り付く事が奇跡・・・
何度も今日は仕方ない、と自分を納得させてきた・・・

今目の前に恋焦がれた景色がある・・・!


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勝手気ままと思っていた天狗様は、鬼子母神のようだった。

あぁそうだ、うちの天狗様も鬼子母神も、子がキーワードとなって帰依したのだった・・・

もうフリーダムとか言うのはよそう。
不思議だ、今は感謝の気持ちしか出てこない。。。



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暫らくは文句など言うまい・・・

息子の言い間違いをわざとそのまま覚えさせたり、
それを笑って、いかにも俺の遺伝子だと言って周ることも、

燕山荘の道祖神に寝顔がそっくりだということも、
天狗様の生き残りだとしても、
夜叉顔だとしても・・・

言うもんか・・・


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燕岳に誓って言うもんか・・・・


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白い花崗岩砂礫に隠れて微笑む可憐な花達。
十中八・九ハクサンイチゲ⇓ではないかと思われる(不安)


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どうだ!!この清々しさは・・・!!
罠だとしても、この後に罰が待っていたとしても許せる気がする・・・

飴と鞭・・・これが夜叉マジック。
このままどこかに連れて行かれるのかもな・・俺は・・・

・・・山に還るのは俺のほうかもしれない・・・


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北ア前山の中でも異様な、それでいて優雅な姿の燕岳。
この山だけが醸す世界。
霧に飲まれつつ自身も光景の一部となる。


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燕山荘から山頂までの道のりは、独壇場だった。
余りの景色に己の無力さを痛感し、途中心細くなる場面もあった。

濃い雲に山麗ごと覆われると、次の瞬間自分も消えてなくなるような、
そんな錯覚を見た・・・・・・


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目の前の人工物に我に返る。
この感動を一つ残らず伝えなくては・・・!

笑顔で見送ってくれた二人に、今俺が撮れる最高の写真を見せなくては・・・!

妻:「いってらっしゃい・・(涙目)。無理はしないでね・・待ってるから(無理してはにかみ手を振る)」

何をどう勘違いしたのかこの時の自分は、脳内妻が出来上がっていて
勝手にバーチャルお見送り映像がリフレインされていた。

自分で言うのも何だが、本当に可哀想な男である。
今もPC画面は涙で滲んで見難いことこの上ない・・・

敢えて書くが、非九州人な夜叉が放ったセリフは「貴様」である・・・

実生活で「生貴様(なまきさま)」一度お試しあれ。
友人・家族・上司、関係一切問わず破壊力は抜群だ・・・


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山頂へやっとの思いで到着。
ここまで来るのにいくつ夢を見ただろう・・・

フリーダム・・
お客さん登山・・
トランスフォーマー・・
天狗様・・
寸劇・・
ひとみ婆さん・・
夜叉・・
鬼子母神・・
脳内妻・・

あぁ、中房温泉以前に関白宣言という夢も見たなぁ・・・


一体何が本当で何が夢か・・・・・・



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燕山荘がガスの中で嘘かまやかしかのように佇む・・・

・・あそこに現実がある・・

・・戻られば・・

・・戻らないと・・

・・戻ったら・・

えぇ!?戻るの!?俺!!


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 戻 っ て い ま す


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山頂では、他の方三人と一緒になり写真を撮ったり撮って貰ったりしてキャッキャキャッキャしました。
5分もしないうちに、大粒の雨粒がバタバタと音を立てて白い花崗岩を濡らし、
お三方は「撤収!撤収!」とばかりに散って行かれました。



丁度その頃・・・

ヘロヘロの息子と一緒に燕山荘に到着した夜叉は、
バタバタと降る雨に不気味な笑みを浮かべ、今雲に隠れんとする山頂を眺めていました。

妻: 「山頂に四人居た」
子: 「え?どこ?お父ちゃんいる?」
妻: 「・・・もう見えなくなった・・・www」

その後は「アホやwwwアホやwww」連呼・・・
「きっと、ザレててガスで見えなくて明るい家庭の蜃気楼なんか見ちゃってフラフラした足取りで谷に呼ばれてザザァーーーッだわ」

それはお前の希望か?千里眼か?

奴もまた燕岳が魅せる夢を見たのか・・・?




二人はさっさと燕山荘の中に入り、とっとと念願のうどんを注文し、ナウシカ原作(全7巻)を読みふけっていた。

やや濡れで山荘階段に現れた俺を見て
温かい部屋の中から指差して笑う二人を見つけた時、
「関白失脚」が流れたのは言うまでもない・・・

山荘の窓は三枚構造になっていて、窓に近づいた時夜叉は
「ダメ、ダメ。この窓開かない(っつうか開けるのが大変で面倒だ)から入り口に回って」
と中でジェスチャーをしながら口をパクパクさせていた。

あぁそうかい?ならば!と山荘の入り口から入ると
俺の顔を見るなり息子が腹をかかえて笑った。

「中から 「やれやれ。本当に帰って来ちゃったねこの人は。しゃらくさいからあっちから下山して」 って言ってたんだよ」


・・・・・・なんということでしょう・・・・・・


それを「OK〜!」と、やりきった爽快感満載の顔でグッと親指なんか立てて踵を返す父。
からかい甲斐のあるのは俺のほうじゃないか・・・


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それでも、山荘でカレー大盛りを食し、
興奮冷めやらぬ俺はまんまと妻に楽しかった!ありがとう!と何度も何度も繰り返すのだった・・・


息子はバンダナを買い(ここに天狗様のお守りは売っていない)、
ひと時の夢を魅せてくれた燕岳にさよならを言い下山を開始する。



尾根道で前方を見ると怪しげな雲は失せ、
大汗をかいた登山者が肩で息をしながら上がって来る。

「今上がれば雲もないだろうな・・」
そんな会話をして行き交う人を見送る。
その背中は夢に誘われるようにハイマツの緑に消えていく・・・


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夢の中をまだかまだかと進み、もがき挫けながら掴んだ岩も帰り道はまた違った顔を見せる。


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登りはグロッキーだった息子も、帰路はヒョイヒョイ走る山猿に遅れをとらずについて行く。

汗かき息を切らして下るのが真骨頂だ。と山猿は猿語で言う。
俺に言わせれば愚の骨頂だ。と俺は人語で話す。

悲しいかな、所詮猿語。最後は藪の向うからキーキィーッとしか聞こえない。

息子が猿語まで解したら嫌だな・・・と少し頭が痛くなる。。。


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燕岳が魅せた夢とは何だったのか。
旅人がみる夢とは何の意味を持つのか。


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現実社会とは離れた自然世界でなら叶えれるかも、と錯覚した数時間。

どの夢も儚く散っていった。


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ただ、夢をみていた時間はとても優しいものだった


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いつかまたこの地を踏むことがあるだろうか・・・
その時はどんな夢を魅せてくれるのか燕よ。


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夢の中で彷徨い悟った真実とは、

俺は自分の力で独走したのではなかった。という事だけだった。


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妖怪にも見え、時には神にも見えた猿語の物の怪に示され登った燕岳。

「よくやった俺!」と狂喜乱舞している場合ではなかった。




・・・・・・俺は何もやり遂げていない・・・・・・




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燕の魅せた夢とは、新たな課題を浮き彫りにしただけのことだったのかもしれない。


そして、俺の進む未来を夜叉に予言させたのかもしれない。

「ザレててガスで見えなくて明るい家庭の蜃気楼なんか見ちゃってフラフラした足取りで谷に呼ばれてザザァーーーッだわ」

確かに夜叉はこう言った。

今後も心して山に入れとのお達しなのだろうか。

それとも女ゴルゴ31に背中を見せたことへの戒めなのだろうか。




明日からも又、常に狙われていることを肝に命じ、中房温泉で夢の欠片を湯で流す。


悶々としたまま、眼を見開いて中央道をひた走る。。。





ラベル:北アルプス
posted by Lilium medeoloides at 00:00| 愛知 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 登山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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